申請人の方が、日本人の配偶者やその実子(実子、特別養子)のいずれかである場合、永住ビザ取得の要件が一部緩和されます。
この緩和を受けるためには、実体法上の身分関係として日本人の配偶者や実子(実子、養子、特別養子)であれば良いとされており、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得していることまでは求められません。
この記事では、このような日本人の配偶者やその実子(実子、特別養子)である方々が、永住ビザを取得するための要件などについて解説したいと思います。
通常の永住ビザを取得するための要件は、入管庁の「永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改定)」や、「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン(平成29年4月26日改定)」が公表されており、ガイドラインには次の3つの要件が記載されています。
①素行善良要件
②独立生計要件
③国益適合要件
各要件については以下の記事でも詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
⇒ 永住ビザ・永住権の要件
通常、外国人の方が永住ビザを取得するためには、上記①~③の要件を全て満たすことが必要です。しかし、申請人が、日本人の配偶者やその実子(実子、特別養子)のいずれかである場合には、③の国益適合要件のみが要件となっています。
それでは、その内容について詳しくみていきましょう。
このページの目次
①実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること
永住ビザを取得するためには、通常は、引き続き10年以上在留していることが必要ですが、このケースでは、実態を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していれば、要件を満たしていることになります。
日本人の実子や特別養子の場合は、1年以上日本に継続して在留していることが必要となります。
結婚はしているけど別居している状態は、「実体を伴った婚姻生活」と見なされない場合があります。一方で、単身赴任などによる別居状態は、正当な理由があるものとして問題無しと見なされる場合があります。(このような正当な理由については、理由書で詳しく説明するようにしましょう。)
在留資格が途切れることなく在留を続けることをいいます。また、在留期間の多くの期間を海外で生活しているような場合は、カウントがリセットされる場合があります。実務上では、1度で3ヶ月以上の出国や、1年のうちで100日以上の出国がある場合は、リセットされる可能性が高いとされています。
②最長の在留期間をもって在留していること
最長の在留期間については、当面の間は3年のビザで良いという取扱いになっています。もちろん5年でも大丈夫です。
③公的年金や公的医療保険の保険料の納付及び納税について
公的年金や公的医療保険の保険料の納付及び納税について、適正に納付されていることに加えて、法令を遵守していることが審査されます。
申請人が日本人の配偶者の場合、審査される対象期間は次の通りです。
・公的年金 ・・・ 申請時から直近2年間
・公的医療保険 ・・・ 申請時から直近2年間
・住民税 ・・・ 申請時から直近3年間
日本人の実子や特別養子については、上記全ての審査期間は、申請時から直近1年間となります。
適正に納付されていることが求められるため、未払いがある場合はもちろんのこと、滞納があった場合も、原則として不許可となります。
仮に未払い分をあとから追納した場合には、そこから始まる新たな審査対象期間において、改めて適正に納付、法令遵守していくことが必要となります。
④世帯に安定した収入があること
独立生計要件に適合することは要件にはなっておりませんが、実務上は審査対象となっているようです。「年収が〇〇〇万円以上あれば大丈夫」といった詳細な情報は公開されておりませんが、世帯年収で300万円以上がボーダーラインといわれています。
扶養家族がある場合には、扶養家族1人当り約30~80万円の上乗せが必要になると考えられています。例えば、扶養家族が1人いる場合には、300万円+30~80万円=330~380万円が年収のボーダーラインとなります。
また、世帯年収となっていますので、夫婦2人の合計年収がボーダーラインを超えていれば良いのですが、アルバイトやパートの収入は世帯収入に含むことはできません。
その上で、算出した年収が、申請時から直近3年間以上は維持できていることが必要となります。
⑤公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
具体的に、一類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱など)、二類感染症(急性灰白髄炎、結核、ジフテリアなど)、指定感染症、新感染症の罹患者又は麻薬、大麻、あへん及び覚せい剤等の慢性中毒者等は、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがあるものと判断されます。
⑥著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
懲役と禁錮の場合は出所してから10年間(執行猶予の場合は5年間)、罰金・拘留・科料であれば支払い終えてから5年間は永住ビザの申請をすることができません。
交通違反がある場合、直近5年間の違反歴を見られます。軽微な違反(スピード違反、駐車違反、一時不停止、携帯電話の使用など)は、1年に1回あるかないかといった程度であれば問題ありません。免停以上の違反は一定期間、永住ビザの申請をすることができません。
また、申請人が未成年の場合、保護観察所の保護観察がつけられていないこと、少年院に送致されていないことが求められます。
⑦身元保証人がいること
このケースでは、通常、配偶者の方が身元保証人なり、身元保証書や運転免許証の写しなどを申請書に添付して提出します。
身元保証には次のような文言が書かれています。
私は上記の者の永住許可申 請に当たり、本人が本邦に在留中、本邦の法令を遵守し、公的義務を適正に履行するため、必要な支援を行うことを保証いたします。
支援することのみを保証する内容となっていますので、保証内容はかなり限定的です。また、この保証は道義的責任に留まり、申請人の代わりに何らかの責任を負うことはありません。
とはいえ、保証内容を守れないことがあった場合には、以降の永住ビザの申請などで身元保証人として認められなくなる可能性がありますので注意しましょう。
この記事では、申請人の方が、日本人の配偶者やその実子(実子、特別養子)のいずれかである場合の、永住ビザを取得するための要件ついて解説してきました。
もっと詳しい情報が欲しい!という方は、以下の入管のウェブサイトも参照してください。
⇒ 出入国在留管理庁 永住許可申請
また、永住ビザ・永住権の申請について、不安な事やわからない事がありましたら、まずは永住ビザ申請に詳しい専門家に相談してみることをお勧めします。当事務所でも無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。