特定技能「造船・舶用工業分野」で外国人を受入れる方法

特定技能「造船・舶用工業分野」で、特定技能1号外国人の受入れを検討している方は、一度この記事をご覧になってみてください。特定技能は、要件、必要書類や受入れまでのフローが複雑で、色々とゴチャゴチャしがちだと思います。この記事では、ポイントとなる部分について全てを要約し、分かりやすく解説しています。一瞬でお客様の頭の中が整理でき、お仕事の5割が片付くのではないかと思います。

特定技能1号ビザで外国人を受け入れるときには、全ての分野に適用される「分野共通の基準」の他に、各分野に特有の事情に鑑みて定められた基準である「上乗せ基準」と呼ばれる基準にも適合していなければ、外国人を受入れることはできません。

令和6年8月現在、「上乗せ基準」は12の分野について設定されており、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」といった新たに追加される分野についても、今後、準備ができ次第設定されていく予定です。

「分野共通の基準」について知りたい方は、以下のページを参照してみてください。

「分野共通の基準」に関する記事一覧
特定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能外国人に関する基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能雇用契約の内容の基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能雇用契約の相手方の基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(1号特定技能外国人支援計画に関する基準等)

特定技能「造船・舶用工業分野」の概要

特定技能「造船・舶用工業分野」の受入れ見込み数について

特定技能1号の対象分野及び業務区分一覧
出入国在留管理庁「外国人材の受入れ及び強制社会実現に向けた取組」(令和6年7月版)より

特定技能「造船・舶用工業分野」の令和6年度から5年間の受入れ見込み数は、36,000人となっています。受入れ予定のある方は、早めに申請しておくようにしましょう。

特定技能「造船・舶用工業分野」の業務区分再編について

令和6年3月29日の閣議決定で、これまでの6業務区分から、「造船」「舶用機械」「舶用電気電子機器」の3業務区分に再編され、新しい業務も追加されています。

造船区分
⇒ 分野、区分の概要:
監督者の指示を理解し、又は自らの判断により船舶の製造工程の作業に従事

⇒ 従事する主な業務:
溶接、塗装、鉄工、とび、配管、船舶加工

②舶用機械区分
⇒ 分野、区分の概要:
監督者の指示を理解し、又は自らの判断により舶用機械の製造工程の作業に従事

⇒ 従事する主な業務:
溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、配管、鋳造、金属プレス加工、強化プラスチック成形、機械保全、舶用機械加工

③舶用電気電子機械区分
⇒ 分野、区分の概要:
監督者の指示を理解し、又は自らの判断により舶用電気電子機器の製造工程の作業に従事

⇒ 従事する主な業務:
機械加工、電気機器組立て、金属プレス加工、電子機器組立て、プリント配線板製造、配管、機械保全、舶用電気電子機器加工

また、日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。関連業務として、例えば、次のものが想定されます。(専ら関連業務に従事することは認められません。)

想定される関連業務
・読図作業
・作業工程管理
・検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、耐圧気密等)
・機器・装置・工具の保守管理
・機器・装置・運搬機の運転
・資材の材料管理・配置
・部品・製品の養生
・足場の組立て・解体
・廃材処理
・梱包・出荷
・資材・部品・製品の運搬
・入出渠
・清掃

特定技能「造船・舶用工業分野」の上乗せ基準

造船・舶用工業分野における「上乗せ基準」の概要
①小型船造船業法に規定する造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること
②造船・舶用工業分野の協議会の構成員であること
③派遣労働者として就労させないこと

造船・舶用工業分野では、受入れ機関から支援の委託を受けている登録支援機関も、協議会に加入することが必要となっております。

特定技能「造船・舶用工業分野」の協議会に加入する方法

特定技能「造船・舶用工業」の協議会構成員になるためには、以下の国土交通省ウェブサイトからダウンロードできる加入申請様式に必要事項を記載して、指定場所まで直接郵送します。目安として15営業日程度審査に時間を要しているようですので、余裕をもって提出するようにしましょう。

特定技能「造船・舶用工業」の協議会への加入申請は、「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認申請と協議会への加入申請を同時に行うようになっております。(登録支援機関は確認を受ける必要はありません。)

国土交通省 造船・舶用工業分野における事業者の確認及び協議会加入手続き
⇒ https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr5_000006.html

「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認申請について

具体的には、次のいずれかに該当する方が「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」となります。

(1)造船業
① 造船法(昭和25年法律第129号)第5条第1項第1号又は第2号の届出を行
っている者
② 小型船造船業法(昭和41年法律第119号)第4条の登録を受けている者
③ 上記①又は②の者からの委託を現に受けて船体の一部の製造又は修繕を行う者

(2)舶用工業 (1)に該当する者を除く。
① 造船法第5条第1項第3号又は第4号の届出を行っている者
② 船舶安全法(昭和8年法律第11号)第6条の2の事業場の認定を受けている者
③ 船舶安全法第6条の3の整備規程の認可を受けている者
④ 船舶安全法第6条の3の事業場の認定を受けている者
⑤ 船舶安全法第6条の4の整備規程の認可を受けている者
⑥ 船舶安全法第6条の4の事業場の認定を受けている者
⑦ 船舶安全法第6条の5の型式承認を受けている者
⑧ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)の規
 定に基づき、上記②から④及び⑦までに相当する制度の適用を受けている者
⑨ 産業標準化法(昭和24年法律第185号)第30条第1項の規定に基づき、部
 門記号Fに分類される鉱工業品に係る日本産業規格について登録を受けた者の認
 証を受けている者
⑩ 船舶安全法第2条第1項に掲げる事項に係る物件(構成部品等を含む。)の製造又
 は修繕を行う者
⑪ 造船造機統計調査規則(昭和25年運輸省令第14号)第5条第2号に規定する
 船舶用機関又は船舶用品(構成部品等を含む。)の製造又は修繕を行う者であって
 同規則に基づき調査票の提出を行っているもの
⑫ 上記以外で、①から⑪まで規定する者に準ずるものとして国土交通省海事局船
 舶産業課長が認める者

確認申請の必要書類について

造船・舶用工業事業者であることの確認を受けようとする場合には、申請書に登記事項証明書を添付することになっています。

また、上記の(1)造船業③又は(2)舶用工業⑩若しくは⑫のいずれかに該当する方は、次のような証明書類の添付も必要です。

(1)造船業③に該当する方の場合
造船法の届出を行っている者又は小型船造船業法の登録を受けている者(以下「造
船事業者」という。)との間の、船体の一部の製造等に係る請負契約書の写し又は
同等の書類(数次の請負契約により、船体の一部の製造等を行っている場合にあっ
ては、造船事業者から確認申請者に至るまでの各請負契約書の写し又は同等の書
類)

請負契約書又は同等の書類に係る契約期間が直近1年以内のものでない場合、1
年以内の造船事業者から確認申請者に至るまでの納品書又は同等の書類

第2(2)⑩又は⑫に該当する者の場合
造船事業者との間の、製造する製品(船舶の用に供されるものに限る。)に係る
買契約書の写し
(数次の売買契約により、製造する製品(船舶の用に供されるもの
に限る。)の供給を行っている場合にあっては、造船事業者から確認申請者に至る
までの各売買契約書の写し)

確認申請者が現に第2(2)⑩又は⑫に規定する事業を営んでいることがわかる定
款又は有価証券報告書

造船・舶用工業事業者であることが確認できた場合、確認通知書が発行されます。確認通知書の有効期限は確認年月日から5年となっています。

協議会への加入申請について

協議会への加入申請の提出物は、原則、加入申請書のみです。

登録支援機関が加入申請を行う際には、申請書の他に登録支援機関であることを証明する書類(登録通知書の写し等)及び登記事項証明書を添付する必要があります。

加入が認められた後、加入通知書が発行されます。

特定技能「造船・舶用工業分野」の技能試験

特定技能1号ビザを取得するためには、造船・舶用工業分野で従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることの証明として、造船・舶用工業分野特定技能1号試験に合格することが必要です。

試験日程、申込方法、その他情報は、以下の一般財団法人日本海事協会のホームページをご確認ください。
⇒ 一般財団法人日本海事協会 https://www.classnk.or.jp/hp/ja/authentication/evaluation/index.html

新業務区分に対応した特定技能試験が開始されるまでの間の経過措置として、旧業務区分に基づき在留許可を受けている者又は旧区分試験に合格した者は、旧業務区分が含まれる新業務区分のすべての業務に従事可能となります。(例:旧業務区分の「溶接」に基づき在留許可を受けている者は、「溶接」が含まれる業務新区分の「造船区分」6業務すべて及び「舶用機械区分」の11業務区分すべてに従事可能となります。)

特定技能1号ビザの日本語試験

特定技能1号ビザを取得するためには、上記の技能試験に加えて、日本語能力を確認するための試験にも合格する必要があります。特定技能1号ビザの取得には、日本語能力試験(JLPT)でN4以上、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上での合格が必要です。

「日本語能力試験 | JLPT」
https://www.jlpt.jp/index.html

「JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト」
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/index.html

技能実習から「造船・舶用工業分野」の特定技能1号ビザへの移行

「技能実習」から「特定技能」への移行の要件は以下の2点です。この場合に、上記の造船・舶用工業分野の技能試験と日本語試験が免除されます。

①技能実習2号を良好に修了していること
②技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること

①について、「技能実習2号を良好に修了している」とは、技能実習計画に従って2年10月以上修了していることをいいます。

②について、特定技能の業務と関連がある技能実習の作業名は次の通りです。

特定技能(業務区分) 技能実習(職種) 技能実習(作業)
舶用機械 鋳造 鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
仕上げ 治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立て仕上げ
舶用電気電子機器 電子機器組立て 電子機器組立て
電気機器組立て 回転電気組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電気巻線制作
プリント配線板製造 プリント配線板設計
プリント配線板製造
造船・舶用機械 鉄工 構造物鉄工
舶用機械・舶用電気電子機器 機械加工 普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工 金属プレス
機械保全 機械保全

技能実習時と異なる業務を行う場合でも、技能実習2号を良好に修了している場合には、日本語試験が免除されます。

特定技能「造船・舶用工業分野」における外国人受入れまでのプロセス

ステップ①
 ・造船・舶用工業分野特定技能協議会への加入
  「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認申請と協議会への加入申請

ステップ②
 ・特定技能雇用契約の締結
 ・事前ガイダンスの実施、健康診断の受診など
 ・支援計画の作成

ステップ③(海外から来日する外国人の場合)
 ・地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付申請~交付
 ・在外公館に査証(ビザ)申請~発給
 ・入国

ステップ③(日本国内に在留中の外国人の場合)
 ・地方出入国在留管理局に在留資格変更の許可申請

ステップ④
入国後(在留資格変更後)遅滞なく各種支援の実施
・生活オリエンテーションの実施
・日本語学習の機会の提供など

ステップ⑤
・受入れ先での就労開始

まとめ

この記事では、特定技能「造船・舶用工業分野」で、特定技能1号ビザを取得して外国人を受け入れる時の要件や受入れまでのフローについて、ポイントとなる部分についてピックアップし、分かりやすく解説してきました。

もっと詳しい情報が知りたいという方は、以下の国土交通省のウェブサイトを参照してみてください。

⇒ 国土交通省 造船・舶用工業分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)

特定技能ビザの申請は、事前に各分野の協議会への加入が必要であったり、分野ごとの上乗せ要件に対応する必要があったり、事前準備がとても複雑です。また、特定技能ビザを申請するための申請書や必要書類の数も多く、本業でお忙しくされているお客様にとって、このような申請書の作成や必要書類の収集は、非常に煩わしく負担の大きい作業と言えます。

このような申請に係る必要書類を適切に作成することはもちろん、ご要望に応じて特定技能の受入れ準備のコンサルティングや各種手続きも、専門の行政書士に安心してお任せいただけます。登録支援機関や特定技能外国人の雇用を検討中の経営者の方、ご担当者の方、お困りの方、まずは気軽にご相談下さい。

最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。

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