技能実習と特定技能について

1.外国人技能実習制度の目的

技能実習とは

外国人技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度で、入国直後の講習期間以外は、雇用関係の下、労働関係法令等が適用されており、令和5年6月末で全国に約36万人在留しています。

外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。

1993年に制度創設され、現在は、平成28年11月28日に公布され、平成29年11月1日に施行された外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)に基づいて、新しい技能実習制度が実施されています。

2.外国人技能実習制度の対象となる職種

外国人技能実習制度の対象となる職種は厚生労働省により定義されています。技能実習2号への移行ができる職種のことを「移行対象職種」と言い、従事する業務内容についても一定の規定が定められています。2号移行対象職種は、2023年10月31日時点で90職種165作業となっています。

技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(90種165作業)

(外国人技能実習機構サイトより)

3.外国人技能実習制度の在留資格

外国人技能実習制度の在留資格は、入国後1年目の技能等を修得する活動(技能実習1号)、2・3年目の技能等に習熟するための活動(技能実習2号)、4・5年目の技能等に熟達する活動(技能実習3号)の3つに分けられています。

4.外国人技能実習制度の問題点

外国人技能実習制度は、あくまで国際協力のための制度であり、日本国内の労働力の確保を目的とした制度ではありません。しかし、実際はその目的と運用実態はかけ離れており、国内の人手不足を技能実習生が補っているという状況が長らく問題視されてきました。

厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害の指摘があるとして、政府の有識者会議では、今の制度を廃止するとした最終報告書がまとめられています。この報告書によりますと、新たな制度では人材の確保と育成を目的とし、名称も「育成就労制度」に変えるとされています。

この「育成就労制度」で、3年間の就労を通じて外国人材を「特定技能1号」の水準になるように育成し、特定技能への円滑な移行を図る見込みです。

5.特定技能制度の目的

特定技能制度は、2019年4月1日に改正入管法が施行され、新たな在留資格「特定技能」による外国人材の受入が開始されました。技能実習制度とは異なり、特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性、技能を有した即戦力となる外国人人材を受入れるためにスタートした制度です。

特定技能制度が創設されたことで、外国人労働者は新たな分野で就労できるようになりました。特に労働力が不足していると言われている「介護」、「建設」、「農業」、「製造業」の分野で外国人労働者の増加が見られており、この傾向は今後も継続するものと考えられています。

6.特定技能制度の対象分野

特定技能制度の在留資格「特定技能」では、人手不足が深刻とされる12分野において、外国人の就労が認められています。この就労が認められた分野を「特定産業分野」といい、現在は特定技能1号には12分野があり、今後は16分野に増える予定です。特定技能2号は11分野で、介護分野は対象外となっています。

【特定技能1号の12分野】
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野、建設業、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲料食品製造業、外食業

2024年3月に次の4分野の追加が決定しました。受け入れ開始時期は未定です。
⇒ 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業

7.特定技能制度の在留資格

特定技能は次の2種類に分かれています。それぞれの特徴や違いなどを見ていきましょう。

7-1.特定技能1号

  • 対象者:特定の産業分野における相当程度の知識、もしくは経験を持つ外国人
  • 在留期間:通算5年が上限(1年、6ヵ月、4ヵ月ごとの更新)
  • 家族帯同:基本的に認めない
  • 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
  • 日本語能力:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)

7-2.特定技能2号

特定技能1号の修了者が希望し、対象者として認められた場合は2号へのステップアップが可能です。特定技能2号の対象者や在留期間は、以下のとおりです。

  • 対象者:特定の産業分野における熟練した技能を持つ外国人
  • 在留期間:3年、1年、6ヵ月ごとの更新
  • 家族帯同:要件を満たせば、配偶者・子どもの帯同が可能
  • 技能水準:試験等で確認
  • 日本語能力:確認不要

8.特定技能在留外国人数の推移

出入国在留管理庁は、2023年(令和5)年12月末現在の「特定技能制度運用状況」を公表しています。

特定技能在留外国人数の推移(令和5年12月末現在)(速報値)

2023年12月末までの総数は、208,462人。内訳は、上陸時に「特定技能」の許可を受けた人は64,649人で、「特定技能」に資格変更した者は143,813人です。
(出入国在留管理庁サイトより)

9.技能実習と特定技能の制度比較

技能実習(団体監理型)特定技能(1号)
在留資格「技能実習」「特定技能」
在留期間技能実習1号:1年以内
技能実習2号:2年以内
技能実習3号:2年以内
(合計で最長5年)
通算5年
外国人の技能水準なし相当程度の知識又は経験が必要
入国時の試験なし(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり)技能水準、日本語能力水準を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
送出機関外国政府の推薦又は認定を受けた機関なし
監理団体あり(非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事業を行う。主務大臣による許可制)なし
支援機関なしあり(個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁長官による登録制)
外国人と受入機関のマッチング通常監理団体と送出機関を通して行われる受入機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を通じて採用することが可能
受入機関の人数枠常勤職員の総数に応じた人数枠あり人数枠なし(介護分野、建設分野を除く)
転籍・転職原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍可能同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能

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