就労ビザや身分系ビザを取得して、長期間日本に在留されている外国人の中には、そろそろ永住ビザ・永住権を取得したいと考えている方も多いのではないでしょうか。永住ビザ・永住権を取得するためには、厳しい要件をクリアすることや多くの申請資料が必要となりますが、在留期間が無期限になるなど、数多くのメリットがあります。
永住ビザ・永住権を取得するための要件の基本的な考え方は、「相当期間日本に在留した間の在留状況に問題がなく、将来にわたってその在留に問題がないことが想定される」ということです。何をもって「問題がなく」と判断するのか、それが具体的な要件となります。
このページでは、永住ビザ・永住権を取得するための要件や必要書類について、解説してみたいと思います。
このページの目次
1.永住ビザ・永住権とは
永住権には、行うことができる在留活動に制限がなく、さらに、在留期間にも制限がありません。そのため、一般的には、日本に生活の本拠を置き、その生涯を過ごす事を望まれる方のための在留資格です。
しかし実際は、在留活動に制限のない、半永久的な就労目的の滞在許可として機能、認識されている場合も多いとされています。
2.永住ビザ・永住権の要件
永住ビザを取得するための要件としては、入管庁の「永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改定)」や、「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン(平成29年4月26日改定)」が公表されており、ガイドラインには次の3つの要件が記載されています。
永住ビザの3つの要件
①素行善良要件
②独立生計要件
③国益適合要件
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
①素行が善良であること(素行善良要件)
【素行善良要件】
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
ざっくりと言えば、警察のお世話になっていないこと、地域に迷惑をかけていないこと、といったところでしょうか。
具体的には、次の内容に該当しない人であることが必要です。
・日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられたことがある人。
ただし、刑の消滅の適用を受けた人、執行猶予の期間を経過した人、復権により資格を回復した人はこれに該当しない人として扱われます。
懲役・禁錮刑の執行を終わって10年を経過したときは、刑の効力は無くなります。
罰金刑以下の執行を終わって5年を経過したときも、刑の効力は無くなります。
刑の免除の言い渡しから2年を経過したときは、言い渡しの効力は無くなります。
刑罰を受けてしまうと、永住ビザの申請は厳しいかもしれません。永住ビザどころか、現在の在留資格の期間更新も不許可になるかもしれませんね。
刑罰でよくあるケースは、交通違反関係です。車の運転をされる外国人の方で、将来的に永住ビザを取得したいと考えている方は、日頃から特に安全運転するようにしましょう。
ただ、ずっと永住ビザの申請ができないという訳ではなくて、刑の執行を終わって真面目に生活を送っていれば、一定期間を経過すると刑の効力が消えて、再び申請ができるようになります。
・少年法による保護処分が継続中の人
少年法による保護処分が継続中の人は、永住ビザを取得することはできません。
・日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない人
軽微な刑罰や軽微な交通違反(青キップなど)を何度も繰り返している場合は、永住ビザを取得することができない場合があります。
資格外活動許可を取得してアルバイトしていたときのオーバーワーク(週に28時間以上)があった場合も、永住ビザを取得することができない場合があります。
②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
【独立生計要件】
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
これは、現状外国人の方が公共の負担になっておらず、外国人の方の仕事や有する資産等から見て、将来的にも安定した生活が見込まれることをいっています。
・生活保護受給していないこと。
・申請人の世帯単位で見た場合に安定した生活を続けることができること。
一般的に、年収のボーダーラインは300万円で、ボーダーラインは扶養家族が1人
増えるごとに50~70万円上昇していくと言われています。
・収入以外では、申請人の世帯単位で有している預貯金、不動産も審査対象です。
・確認対象期間は直近5年です。(在留資格や条件によって変わる場合もあります。)
③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
【国益適合要件】
その者の永住が日本国の利益に合すると認められること。
国益適合要件は、具体的には、以下の条件のいずれにも適合する人であることが必要です。
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
引き続き10年以上日本に在留しており、この10年以上の期間のうち、5年以上は就労ビザで在留していることが必要です。
⇒ 就労には、技能実習や特定技能1号の他に、資格外活動許可によるアルバイトの期
間も含まれません。
⇒ 「引き続き」については、連続性が求められます。年間100日以上の海外渡航歴が
ある場合等は、引き続き日本に在留する期間のカウントがリセットされる場合があ
ります。
⇒ 原則10年在留に関する特例について
・日本人・永住者の配偶者等 ・・・ 3年の結婚生活+引き続き1年以上日本に在留
・定住者 ・・・ 5年以上継続して日本に在留
・高度人材70点以上 ・・・ 3年以上継続して日本に在留
・高度人材80点以上 ・・・ 1年以上継続して日本に在留
・日本国に貢献した者 ・・・ 累計で5年以上
罰金刑や懲役刑などを受けていないことについては、素行善良要件と重複する部分です。
公的義務の適正な履行については、この要件で引っかかる方が非常に多く、要注意です。国民年金や国民健康保険の未払いはもってのほかで、滞納があった場合でも申請は不許可となる可能性が高いでしょう。このような場合には、適正な履行の実績を作り上げた後に申請をする必要があります。
この他の細かい部分では、ウの最長の在留期間については、当面の間は3年のビザで良いという取扱いになっています。
エについては、伝染病や薬物中毒患者である場合には、公衆衛生上の観点から有害であると判断されてしまいます。
3.身元保証人について
厳密に言えば、永住ビザ・永住権の要件に該当しないかもしれないのですが、もう一点重要な要件があります。
それは、永住ビザの申請には、身元保証人が必要であるということです。日本人か永住者の身元保証人が必要となっており、身元保証人と申請人は一定の関係性が求められます。(赤の他人では認められません。)
申請時に、身元保証人の住所・氏名・職業・国籍・申請人との関係性を記載し、運転免許証のコピーと一緒に提出します。身元保証人になっていただきたい人には、前もってお願いしておくようにしましょう。
4.永住ビザ・永住権の要件の適用範囲について
永住ビザの3つの要件の適用範囲は次の表の通りです。
日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子 | 難民認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者 | その他の者 | |
素行善良要件 | ― | 〇 | 〇 |
独立生計要件 | ー | ― | 〇 |
国益適合要件 | 〇 | 〇 | 〇 |
日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子の場合は、形式上は国益適合要件のみを満たしていれば、永住ビザを申請して取得できる可能性がある、ということになります。
難民認定された方の場合は、素行善良要件と国益適合要件を満たしていれば良く、これら以外の方の場合は、3つの要件を全てを満たしている必要があります。
5.永住許可申請の必要書類例(日本人の配偶者等の場合)
在留資格「日本人の配偶者等」の方が永住ビザを申請をする際の必要書類の一例です。
・永住許可申請書
・写真
・身分関係を証明する資料
戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書など
・申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
・申請人又は申請人を扶養する方の職業を証明する資料
在職証明書又は確定申告書控えの写しや営業許可書の写しなど
・直近(過去3年分)の申請人及び申請人を扶養する人の所得及び納税状況を証明する資料
住民税の課税証明書及び納税証明書、納税証明書(その3)など
・申請人及び申請人を扶養する人の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明す
る資料
ねんきんネットの各月の年金記録の印刷画面、保険証の写しなど
・社会保険適用事業所の事業主である場合は、健康保険・厚生年金保険料領収証書(写し)など
・パスポート(旅券)・在留カードの提示
・身元保証書及び身元保証人の運転免許証の写し
・了解書
・理由書
6.永住ビザの審査期間について
永住ビザの審査期間は、出入国管理局が公表している標準処理期間では4ヶ月となっています。
実際は4ヶ月以上かかっている方がほとんどです。
7.まとめ
この記事では、永住ビザを取得するための要件や必要書類について、ポイントとなる部分について解説してきました。永住ビザの申請には、さまざまな資料や費用が必要となります。永住ビザの取得をお考えの方は、ご自身の場合でどれくらいの時間や費用がかかるかをしっかり検討して申請手続を行うようにしましょう。
もっと詳しい情報が欲しい!という方は、以下の入管のウェブサイトも参照してください。
⇒ 出入国在留管理庁 永住許可申請
また、永住ビザ・永住権の申請について、不安な事やわからない事がありましたら、まずは永住ビザ申請に詳しい専門家に相談してみることをお勧めします。当事務所でも無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。