特定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能雇用契約の相手方の基準)

特定技能制度を利用して外国人人材の確保・雇用を検討している企業の方にとって、特定技能ビザを取得するための要件を知っておくことは非常に大切な事です。

特定技能ビザには1号と2号がありますが、ここでは、特定技能1号ビザを例に、具体的にどのような要件や基準を満たす必要があるのかについて、確認してみましょう。

このページの目次

1.特定技能に関する基準

特定技能1号ビザを取得するためには、大きく見て次の4つの基準を満たしておく必要があります。

・特定技能外国人に関する基準
・特定技能雇用契約の内容の基準
・特定技能雇用契約の相手方の基準
・1号特定技能外国人支援計画に関する基準等

一つでも基準を満たしていない項目がある場合、特定技能1号ビザを取得することができなくなるため、注意が必要です。

この記事では、4つの大きな基準のうち、特定技能雇用契約の相手方の基準について、詳しく見ていきたいと思います。

2.特定技能雇用契約の相手方の基準(適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るもの)

特定技能雇用契約の相手方とは、特定技能外国人を雇用する企業・団体、つまり特定技能所属機関を指しています。

特定技能1号ビザを取得するために、特定技能雇用契約の相手方、つまり特定技能所属機関が満たす必要がある基準で、適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは下記の通りです。

①労働、社会保険及び租税に関する法令の規定の遵守に関するもの
②非自発的離職者の発生に関するもの
③行方不明者の発生に関するもの
④関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由
⑤実習認定の取消しを受けたことによる欠格事由
⑥出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行ったことに関するもの
⑦暴力団排除の観点からの欠格事由
⑧特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由
⑨特定技能外国人の活動状況に係る文書の作成等に関するもの
⑩保証金の徴収・違約金契約等による欠格事由
⑪支援に要する費用の負担に関するもの
⑫派遣形態による受入れに関するもの
⑬労災保険法に係る措置等に関するもの
⑭特定技能雇用契約継続履行体制に関するもの
⑮報酬の口座振込み等に関するもの
⑯分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの

各項目について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

①労働、社会保険及び租税に関する法令の規定の遵守に関するもの

労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していることが必要です。

②非自発的離職者の発生に関するもの

特定技能所属機関が、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を受け入れることは、人手不足に対応するための人材の確保という制度の趣旨に沿わないことから、特定技能外国人に従事させる業務と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないことが求められます。

特定技能雇用契約の締結の日の前1年以内のみならず、特定技能雇用契約を締結した後も非自発的離職者を発生させていないことが必要です。

③行方不明者の発生に関するもの

特定技能所属機関が雇用する外国人について責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させている場合には、受入れ体制が十分であるとはいえないため、雇用契約締結の日の前1年以内及び当該契約締結後に行方不明者を発生させていないことが求められます。

特定技能雇用契約の締結の日の1年前だけではなく、特定技能雇用契約を締結した後も外国人の行方不明者を発生させていないことが必要です。

④関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由

次のいずれかに該当する場合には、欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。
① 禁錮以上の刑に処せられた者
② 出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
③ 暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
④ 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者

いずれも、「刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」が対象となります。

⑤実習認定の取消しを受けたことによる欠格事由

実習実施者として技能実習生を受け入れていた際に実習認定の取消しを受けた場合、当該取消日から5年を経過しない者(取り消された者の法人の役員であった者を含む。)は、特定技能所属機関になることはできません。

なお、技能実習法施行前の技能実習制度において、不正行為(技能実習の適正な実施を妨げるものとして「不正行為」の通知を受けたものに限る。)に及んだ場合、後記⑥の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為として、当該行為の終了の日から受入れ停止期間を経過しない者は、特定技能所属機関になることはできません。

⑥出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行ったことに関するもの

特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、出入国又は労働関係法令に関する不正行為等を行った者は、欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。

出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為については、個別具体的な事案の重大性に応じて該当性が判断されることとなります。

⑦暴力団排除の観点からの欠格事由

次に該当する者は、暴力団排除の観点からの欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。
① 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。以下同じ。)及びその役員が暴力団員等
② 暴力団員等がその事業活動を支配する者

⑧特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由

次のいずれかに該当する者は、行為能力・役員等の適格性の観点からの欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。
① 精神機能の障害により特定技能雇用契約の適正な履行に必要な認知等を適切に行うことができない者
② 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
③ 法人の役員、未成年の法定代理人で特定技能基準省令第2条第1項第4号各号(ワを除く。)に該当する者

⑨特定技能外国人の活動状況に係る文書の作成等に関するもの

特定技能所属機関に対し、特定技能外国人の活動状況に関する文書を作成し、特定技能外国人が業務に従事する事業所に備えておくことが必要です。

⑩保証金の徴収・違約金契約等による欠格事由

特定技能所属機関は、特定技能外国人及びその親族等が、保証金の徴収や財産の管理又は違約金契約を締結させられているなどの場合には、そのことを認識して特定技能雇用契約を締結することはできません。

「保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されない」ことについては、特定技能所属機関、登録支援機関、職業紹介事業者など特定技能雇用契約に基づく特定技能外国人の本邦における活動に関与する仲介事業者だけではなく、本邦外の仲介事業者(ブローカー)等を含め、幅広く規制の対象とされています(このため、この規定には特段主語を規定されていません。)。

「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」とは、特定技能所属機関から失踪することなど労働契約の不履行に係る違約金を定める契約のほか、地方出入国在留管理局や労働基準監督署への法令違反に係る相談をすること、休日に許可を得ずに外出すること、若しくは作業時間中にトイレ等で離席すること等を禁じて、その違約金を定める契約、又は商品若しくはサービスの対価として不当に高額な料金
の徴収を予定する契約などが該当します。

⑪支援に要する費用の負担に関するもの

1号特定技能外国人に対する支援に要する費用は、本制度の趣旨に照らし、特定技能所属機関等において負担すべきものであることから、1号特定技能外国人に直接的又は間接的にも負担させないことが求められます。

⑫派遣形態による受入れに関するもの

特定技能外国人を派遣労働者として受入れをする場合には、派遣元は当該外国人が従事することとなる特定産業分野に関する業務を行っていることなどが求められるほか、出入国在留管理庁長官と当該特定産業分野を所管する関係行政機関の長との協議により適当であると認められた場合に限られます。

派遣先についても、派遣元である特定技能所属機関と同様に、労働、社会保険及び租税に関する法令の遵守、一定の欠格事由に該当しないことなどが必要です。

⑬労災保険法に係る措置等に関するもの

特定技能外国人への労働者災害補償保険の適用を確保するため、特定技能所属機関が労災保険の適用事業所である場合には、労災保険に係る保険関係の成立の届出を適切に履行していることを求められます。

「その他これに類する措置」とは、特定技能所属機関が労災保険制度において暫定任意適用事業とされている農林水産の事業の一部を想定しているもので、この場合、労災保険の代替措置として、労災保険に類する民間保険に加入していることをいいます。

⑭特定技能雇用契約継続履行体制に関するもの

特定技能所属機関に、特定技能外国人の安定した就労活動を確保するため、特定技能雇用契約を継続して履行する体制を有していることが求められます。

特定技能雇用契約を継続して履行する体制とは、特定技能所属機関が事業を安定的に継続し、特定技能外国人と締結した特定技能雇用契約を確実に履行し得る財政的基盤を有していることを意味しています。

⑮報酬の口座振込み等に関するもの

特定技能外国人に対する報酬の支払をより確実かつ適正なものとするため、当該外国人に対し、報酬の支払方法として預金口座への振込みがあることを説明した上で、当該外国人の同意を得た場合には、預貯金口座への振込み等により行うことを求めるものです。

預貯金口座への振込み以外の支払方法を採った場合には、後に出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることが必要です。

⑯分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの

特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。

3.特定技能雇用契約の相手方の基準(適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るもの)

次に、特定技能1号ビザを取得するために、特定技能雇用契約の相手方、つまり特定技能所属機関が満たす必要がある基準で、適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは下記の通りです。

①中長期在留者の受入れ実績等に関するもの
②十分に理解できる言語による支援体制に関するもの
③支援の実施状況に係る文書の作成等に関するもの
④支援の中立性に関するもの
⑤支援実施義務の不履行に関するもの
⑥定期的な面談の実施に関するもの
⑦分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの

各項目について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

①中長期在留者の受入れ実績等に関するもの

特定技能所属機関は、次のいずれかに該当しなければなりません。
① 過去2年間に中長期在留者(注)の受入れ又は管理を適正に行った実績があること、及び、役員又は職員の中から、適合1号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(支援責任者)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の適合1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(支援担当者)を選任していること
② 役員又は職員であって過去2年間に中長期在留者(注)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び特定技能外国人に活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること
③ ①及び②に該当する者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として出入国在留管理庁長官が認めるもの
(注)法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上欄の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。)をもって在留する者をいいます。

②十分に理解できる言語による支援体制に関するもの

1号特定技能外国人支援計画の適正性の確保の観点から、①特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な情報提供体制と、②担当職員を確保して特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な相談体制等を構築しておくことが必要です。

③支援の実施状況に係る文書の作成等に関するもの

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、特定技能雇用契約の終了日から1年以上備えて置くことが必要です。

④支援の中立性に関するもの

支援の適正性や中立性の確保の観点から、支援責任者及び支援担当者が、①1号特定技能外国人を監督する立場にないこと及び特定技能所属機関と当該外国人の間に紛争が生じた場合に少なくとも中立的な立場であること、②一定の欠格事由に該当しないことを求めるものです。

⑤支援実施義務の不履行に関するもの

特定技能所属機関が、特定技能雇用契約締結前の5年以内及び当該契約締結後に、1号特定技能外国人支援を怠ったことがあってはなりません。

⑥定期的な面談の実施に関するもの

特定技能外国人の安定的かつ継続的な在留活動を確保するための支援として、特定技能外国人だけではなく、当該外国人を監督する立場にある者とも定期的な面談をすることが求められます。

洋上で長期間行われるなどの漁業分野(漁業)における定期的な面談については、面談に代えて3か月に1回以上の頻度で、無線や船舶電話によって特定技能外国人及び当該外国人の監督者と連絡をとることとし、近隣の港に帰港した際には支援担当者が面談を行うこととして差し支えありません。

⑦分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの

特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。

4.まとめ

この記事では、特定技能1号ビザを取得するための特定技能雇用契約の相手方の基準について、適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものと、適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものについて確認してきました。

特定技能ビザは、人手不足解消のための人材確保を目的としたビザという性質上、今後も受入れが拡大していくことが予想されます。技能実習生からの移行も更に加速すると思われます。

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最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。

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