特定技能制度は、2019年4月1日に改正入管法が施行され、新たな在留資格「特定技能」による外国人材の受入が開始されました。「人づくり」や「国際協力」が目的であった技能実習制度に対し、特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性、技能を有した即戦力となる外国人人材の確保を目的としてスタートした制度です。
特定技能制度を利用して外国人人材の確保・雇用を検討している企業の方にとって、特定技能ビザを取得するための要件を知っておくことは非常に大切な事です。特定技能ビザには1号と2号がありますが、ここでは、特定技能1号ビザを例に、具体的にどのような要件や基準を満たす必要があるのかについて、確認してみましょう。
このページの目次
1.特定技能に関する基準
特定技能1号ビザを取得するためには、大きく見て次の4つの基準を満たしておく必要があります。
・特定技能外国人に関する基準
・特定技能雇用契約の内容の基準
・特定技能雇用契約の相手方の基準
・1号特定技能外国人支援計画に関する基準等
一つでも基準を満たしていない項目がある場合、特定技能1号ビザを取得することができなくなるため、注意が必要です。
2.特定技能外国人に関する基準
ここでは、特定技能外国人に関する基準について見ていきたいと思います。特定技能1号ビザを取得するために、外国人の方が満たす必要のある基準は下記の通りです。
特定技能制度は、即戦力となる外国人人材を確保するための制度であることから、一定以上の技能水準が求められたり、安心して仕事に取り組むことができる環境を確保するための基準が定められています。
①年齢に関するもの
②健康状態に関するもの
③技能水準に関するもの
④日本語能力に関するもの
⑤退去強制令書の円滑な執行への協力に関するもの
⑥通算在留期間に関するもの
⑦保証金の徴収・違約金契約等に関するもの
⑧費用負担の合意に関するもの
⑨本国において遵守すべき手続に関するもの
⑩分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの
各項目について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
①年齢に関するもの
18歳以上であること。18歳未満であっても、在留資格認定証明書交付申請を行うことは可能ですが、日本に上陸する時点においては、18歳以上でなければなりません。
②健康状態に関するもの
健康状態が良好であること。申請の日から遡って3か月以内に、日本で行おうとする活動を支障なく行うことができる健康状態にあることについて、医師の診断を受けなければなりません。
提出する立証資料の検診項目としては、少なくとも、健康診断個人票(参考様式第1-3号)に記載した健康診断項目を検診していることが求められます。
③技能水準に関するもの
従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていることが必要です。
試験その他の評価方法は、特定産業分野に係る分野別運用方針及び分野別運用要領で定められています。
なお、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合には、技能水準について試験その他の評価方法による証明は要しないこととされています。
技能実習2号を修了した者には、技能実習法施行前の技能実習2号を修了した技能実習生や、在留資格「技能実習」が創設される前の「特定活動」(技能実習)をもって在留していた技能実習生(「研修」及び「特定活動」で在留した期間が2年10か月以上の者に限る。)も含まれます。
④日本語能力に関するもの
本邦での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていることが必要です。
試験その他の評価方法は、特定産業分野に係る分野別運用方針及び分野別運用要領で定められています。
なお、技能実習2号を良好に修了している場合は、原則として、修了した技能実習の職種・作業の種類にかかわらず、日本語能力水準について試験その他の評価方法による証明は要しないこととされています(試験免除)。ただし、介護分野において証明を求めることとしている介護日本語評価試験の合格については、介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除き、試験免除されないことに注意してください。(詳細は、要領別冊-介護分野の基準について、を参照。)
技能実習2号を修了した者には、技能実習法施行前の技能実習2号を修了した技能実習生や、在留資格「技能実習」が創設される前の「特定活動」(技能実習)をもって在留していた技能実習生(「研修」及び「特定活動」で在留した期間が2年10か月以上の者に限る。)も含まれます。
⑤退去強制令書の円滑な執行への協力に関するもの
入管法における退去強制令書が発付されて送還されるべき外国人について、自国民の引取り義務を履行しない等、退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域の外国人の受入れは認められません。
退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域とは、告示で定める次の国・地域をいいます。
⇒ イラン・イスラム共和国
⑥通算在留期間に関するもの
特定技能1号のビザで在留した期間が、通算して1年に達していないこと。5年以上、特定技能1号ビザで在留することはできません。
次の場合は通算在留期間に含まれます。
・失業中や育児休暇及び産前産後休暇等による休暇期間
・労災による休暇期間
・再入国許可による出国(みなし再入国許可による出国を含む。)による出国期間
・「特定技能1号」を有する者が行った在留期間更新許可申請又は在留資格変更
許可申請中(転職を行うためのものに限る。)の特例期間
・特例措置として「特定技能1号」への移行準備のために就労活動を認める「特定
活動」で在留していた期間
⑦保証金の徴収・違約金契約等に関するもの
特定技能外国人又はその親族等が、保証金の徴収や財産の管理又は違約金契約を締結させられているなどの場合には、特定技能の適正な活動を阻害する原因となるため、これら保証金の徴収等があってはなりません。
この基準は、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、特定技能所属機関や登録支援機関のほか、関係者全般を幅広く規制の対象としています。
⑧費用負担の合意に関するもの
特定技能外国人が入国前及び在留中に負担する費用について、負担する費用の額及び内訳を十分に理解して合意していることが必要です。
費用の徴収は、各国の法制に従って適法に行われることが前提となりますが、社会通念上、特定技能外国人が負担することに合理的な理由が認められるものについては、外国の機関が費用を徴収することが認められます。したがって、職業紹介事業者や外国の機関を経由して、特定技能外国人を雇用する場合は、特定技能外国人が外国の機関から徴収された費用の額及びその内訳について、十分に理解し合意を得た上で、その費用が徴収されていることを確認することが必要です。
特定技能外国人が定期に負担する費用(水道光熱費、家賃、食費など)については、所属機関が給料天引きなどで徴収する場合、その費用の対価として提供される利益が特定技能外国人本人に帰属するものであり、かつ、特定技能外国人がその内容を十分に理解した上で特定技能所属機関と特定技能外国人との間で合意している合理的な額である必要があります。
⑨本国において遵守すべき手続に関するもの
特定技能外国人が、海外に渡航して労働を行う場合、本国において必要な手続を遵守していることが必要です。
この基準では、悪質なブローカー等の排除を目的として、二国間取決めを送出国政府との間で作成することとしています。この取決めにおいて「遵守すべき手続」が定められている場合には当該手続を経ていることが必要となります。
二国間取決めについての国別の情報は、出入国在留管理庁ホームページで確認することができます。(二国間取決めを作成した国以外の国籍を有する者であっても受け入れることは可能です。)。
⑩分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に関するもの
特定産業分野ごとの特有の事情に応じて上乗せ基準が定められている場合には、その基準にも適合していることが必要です。
詳細は、各特定産業分野の運用要領で確認することができます。 ⇒ 出入国在留管理庁 特定技能運用要領
3.まとめ
この記事では、特定技能1号ビザを取得するための特定技能外国人に関する基準について確認しました。
特定技能ビザは、人手不足解消のための人材確保を目的としたビザという性質上、今後も受入れが拡大していくことが予想されます。技能実習生からの移行も更に加速すると思われます。
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最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。