特定技能「建設分野」で外国人を受入れる方法

特定技能1号ビザで外国人を受け入れるときには、全ての分野に適用される「分野共通の基準」の他に、各分野に特有の事情に鑑みて定められた基準である「上乗せ基準」と呼ばれる基準にも適合していなければ、外国人を受入れることはできません。

「分野共通の基準」に関する記事一覧
特定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能外国人に関する基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能雇用契約の内容の基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(特定技能雇用契約の相手方の基準)
定技能1号ビザを取得するための要件(1号特定技能外国人支援計画に関する基準等)

令和6年8月現在、「上乗せ基準」は12の分野について設定されており、「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」といった新たに追加される分野についても、今後、準備ができ次第設定されていく予定です。

この記事では、特定技能「建設分野」で、特定技能1号ビザを取得して外国人を受け入れる時の要件や受入れまでのフローについて、ポイントとなる部分について分かりやすく解説したいと思います。このような外国人の受入れを検討されている方のお役に立てれば幸いです。

特定技能「建設分野」の上乗せ基準

建設分野における「上乗せ基準」の概要
(1)建設分野の受入機関(受入企業)が、次のいずれにも該当していること。
 ① 建設特定技能受入計画を作成し、国土交通大臣の認定を受けていること。
 ② 国又は適正就労監理機関による巡回指導を受入れること。
(2)建設特定技能受入計画の認定基準
 ① 受入機関が次に掲げる要件をいずれも満たしていること
   ・ 受入機関は建設業法第3条第1項の許可を受けていること
   ・ 建設キャリアアップシステムへの登録
   ・ 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入及び当該法人が策定
     する行動規範の遵守
   ・ 受入計画の申請の日前5年以内又はその日以後に、建設業法に基づく監督
     処分を受けていないこと。
   ・ 職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内
     人材確保の取組を行っていること。
 ② 特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定
   的な賃金支払い、技能習熟に応じた昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇
   用契約に明記していること。
 ③ 特定技能雇用契約を締結するまでの間に、賃金等の契約上の重要事項につい
   て、外国人が十分に理解できる言語で、書面で事前に説明していること。
 ④ 1号特定技能外国人の受入を開始、終了又は1号特定技能外国人が特定技能
   雇用契約に基づく活動を継続することが困難となったときは、国土交通大臣
   に報告を行うこと。
 ⑤ 1号特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること。
 ⑥ 1号特定技能外国人の総数が常勤の職員の総数を超えないこと。
 ⑦ 1号特定技能外国人に対し、受入れ後、国土交通大臣が指定する講習または
   研修を受講させること。

建設分野の協議会は他の分野と少し仕組みが異なっていて、受入れ機関は協議会に加入する代わりに、特定技能外国人受入企業実施法人として登録されている「(一社)建設技能人材機構(JAC)」と呼ばれる団体に加入することになります。

受入れ機関から支援の委託を受けている登録支援機関の加入については、建設分野では任意となっています。

(一社)建設技能人材機構(JAC)に加入する方法

特定技能「建設分野」の受入れ機関は、協議会に加入する代わりに、「(一社)建設技能人材機構(JAC)」と呼ばれる団体に加入することになります。加入するには、間接的に又は直接的に加入する方法があります。

(一社)建設技能人材機構(JAC)に加入する方法
国土交通省資料:「建設分野における外国人の受入れ」より

JACに間接的に加入する方法

2024年7月1日現在、JACは正会員である54建設業者団体で構成されています。
受入れ機関が、JACの正会員である建設業者団体の会員である場合には、JACに間接的に加入していると見なされ、JACに直接的に加入する必要はありません。

この場合、受入れ機関は、JACに年会費を支払う必要はありませんが、加入しようとする建設業者団体が定める会費負担等のルールに従うことが必要です。

JACの正会員である建設業者団体は、全国組織であり、当該団体が各地域に支部を有している場合が大半です。受入れ機関がこのような各地域の支部に所属している場合であっても、JACに間接的に加入していると見なされます。既に加入している地域の団体がある場合には、JACに間接的に加入していると見なされるかどうかについて、電話やメールなどで確認してみると良いと思います。

JACの正会員である建設業者団体への入会を希望される場合には、その団体に直接お問い合わせください。

JACに直接的に加入する方法

様々な理由により、JACの正会員である建設業者団体の会員にならない場合は、JACに直接的に加入し、賛助会員となることが必要です。

JACの賛助会員として入会するには、履歴事項全部証明書、印鑑証明書等の書類の提出に加えて、年会費24万円の負担及びJACの理事会の承認が必要となります。

JACに間接的又は直接的に加入するには、以下のリンク先の流れに沿って申し込みをしてください。加入手続きには時間がかかる団体もありますので、早めに手続きを終えておくと安心かと思います。

⇒ (一社)建設技能人材機構(JAC) 建設技能人材機構(JAC)の会員になる2つのルート

特定技能「建設分野」の技能試験

特定技能1号ビザを取得するためには、建設分野で従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることの証明として、技能検定3級の水準に相当する技能評価試験と日本語試験の両方に合格することが必要です。

技能評価試験については、技能検定3級又は(一社)建設技能人材機構(JAC)が実施する技能検定3級の水準に相当する建設分野特定技能1号評価試験のいずれかに合格することが必要です。

建設分野特定技能1号評価試験の試験日程、申込方法、その他情報は、以下の国土交通省や一般社団法人建設技能人材機構のホームページをご確認ください。

⇒ 国土交通省 試験・セミナー等開催案内【特定技能制度(建設分野)】

⇒ (一社)建設技能人材機構(JAC) 建設分野特定技能の評価試験情報と申込み

一般社団法人建設技能人材機構(JAC)のホームページには、学習用のテキスト、サンプル問題、各国語のテキストなどが公開されています。

特定技能1号ビザの日本語試験

特定技能1号ビザを取得するためには、上記の技能評価試験に加えて、日本語能力を確認するための試験にも合格する必要があります。特定技能1号ビザの取得には、日本語能力試験(JLPT)でN4以上、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上での合格が必要です。

「日本語能力試験 | JLPT」
https://www.jlpt.jp/index.html

「JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト」
https://www.jpf.go.jp/jft-basic/index.html

技能評価試験と日本語試験の両方に合格した外国人に対して、この外国人の受入れを希望する建設企業と特定技能雇用契約を締結し、一定の手続きを経て、「特定技能1号」という在留資格が付与されることになります。

技能実習から「建設分野」の特定技能1号ビザへの移行

現状、建設分野で特定技能1号を取得する場合には、技能実習2号を経て試験免除で取得するケースが圧倒的に多いのではないでしょうか。

このように「技能実習」から「特定技能」へ移行する場合の要件は以下の2点です。この要件に適合した場合に、上記の建設分野の技能試験と日本語試験が免除されます。

①技能実習2号を良好に修了していること
②技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること

①について、技能実習2号を「良好に修了」とは、技能実習を2年10か月以上修了し、次のいずれかを満たすことが必要です。

・技能検定3級又は技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること。
・技能検定3級又は技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していないもの
 の、実習中の出勤状況や技能等の修得状況、生活態度等を記載した実習実施者が
 作成した評価調書により技能実習2号を「良好に修了」したと認められること。

②について、特定技能の業務と関連がある技能実習の作業名は次の通りです。

特定技能(業務区分) 技能実習(職種) 技能実習(作業)
建設(土木) さく井 パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建設(建築)(ラ・設備) 建築板金 ダクト板金
内外装板金
建設(ラ・設備) 冷凍空気調和機器施工 冷凍空気調和機器施工
建設(建築) 建具製作 木製建具手加工
建設(建築) 建築大工 大工工事
建設(土木)(建築) 型枠施工 型枠工事
建設(土木)(建築) 鉄筋施工 鉄筋組立て
建設(土木)(建築) とび とび
建設(建築) 石材施工 石材加工
石張り
建設(建築) タイル張り タイル張り
建設(建築) かわらぶき かわらぶき
建設(建築) 左官 左官
建設(ラ・設備) 配管 建築配管
プラント配管
建設(ラ・設備) 熱絶縁施工 保温保冷工事
建設(建築) 内装仕上げ施工 プラチック系床仕上げ工事
カーペット系床上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
建設(建築) サッシ施工 ビル用サッシ施工
建設(建築) 防水施工 シーリング防水工事
建設(土木)(建築) コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事
建設(土木) ウエルポイント施工 ウエルポイント工事
建設(建築) 表装 壁装
建設(土木) 建設機械施工 押土・整地
積込み
掘削
締固め
建設(建築) 築炉 築炉

技能実習時と異なる業務を行う場合でも、技能実習2号を良好に修了している場合には、日本語試験が免除されます。

このように、技能実習を経て試験免除となる外国人に対しても、当該外国人の受入れを希望する建設企業と特定技能雇用契約を締結し、一定の手続きを経た後に、「特定技能1号」という在留資格が付与されます。

また、在留資格「特定活動」(国土交通省の外国人建設就労者受入事業)で就労中の外国人建設就労者についても、技能実習2号を良好に修了したことを前提としているので、試験免除で在留資格「特定活動」から在留資格「特定技能1号」に変更することが可能です。

特定技能「建設分野」における外国人受入れまでのプロセス

  1. 建設業許可の取得
  2. JACに間接的または直接的に加入 ⇒ 会員証明書の入手
  3. 建設キャリアアップシステムへの登録
  4. 特定技能雇用契約に係る重要事項説明
  5. 特定技能雇用契約の締結
  6. 建設特定技能受入計画の認定申請
    ※在留資格の在留期間満了日または入国予定年月日の半年前から申請可能です。
    ※建設特定技能受入計画の審査は、受入企業の主たる営業所を管轄する地方整備
     局等が担当します。
    ※地域によっては審査が完了するまでに3〜4か月かかる場合があります。
  7. 1号特定技能外国人支援計画の作成
  8. 「在留資格変更許可申請」または「在留資格認定証明書交付申請」
    ※在留資格変更許可申請:在留資格の在留期間満了日の2ヶ月前から申請可能。
    ※在留資格認定証明書交付申請:入国予定年月日の3ヶ月前から申請可能。

    まとめ

    この記事では、特定技能「建設分野」で、特定技能1号ビザを取得して外国人を受け入れる時の要件や受入れまでのフローについて、ポイントとなる部分についてピックアップし、分かりやすく解説してきました。

    もっと詳しい情報が知りたいという方は、以下の国土交通省のウェブサイトを参照してみてください。

    ⇒ 国土交通省 外国人材の活用 ~ 特定技能制度(建設分野

    特定技能ビザの申請は、事前に各分野の協議会への加入が必要であったり、分野ごとの上乗せ要件に対応する必要があったり、事前準備がとても複雑です。また、特定技能ビザを申請するための申請書や必要書類の数も多く、本業でお忙しくされているお客様にとって、このような申請書の作成や必要書類の収集は、非常に煩わしく負担の大きい作業と言えます。

    このような申請に係る必要書類を適切に作成することはもちろん、ご要望に応じて特定技能の受入れ準備のコンサルティングや各種手続きも、専門の行政書士に安心してお任せいただけます。登録支援機関や特定技能外国人の雇用を検討中の経営者の方、ご担当者の方、お困りの方、まずは気軽にご相談下さい。

    最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。

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